関係が終了する必要がある場合に、どのように知っている
弁護士法人 淀屋橋・山上合同 - 震災法律Q&A
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Ⅰ 借 家
Ⅱ 借 地
Ⅲ マンション
Ⅳ 土地建物所有権
Ⅰ 借 家
Q1 | 震災で建物が滅失した場合に借家契約はどうなりますか。 |
建物が滅失した場合には、賃借する対象物がなくなるため、民法上の原則では、そこで借家契約は終わりになります。しかし、政令により指定された一定の地域(指定地域)に罹災都市借地借家臨時処理法(以下、本章解説において「罹災法」といいます)が適用される場合には、建物賃借人は次に述べるような強い権利を取得することになります。ただし、本章Q2のとおり、東日本大震災では、罹災法の適用はありません。
建物が滅失していない場合には、本章Q3のとおり、罹災法の適用はありません。建物が滅失したか、していないか、の判断が重要となります。
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Q2 | 罹災都市借地借家臨時処理法とはどのような法律ですか。同法が適用されるとどうなりますか。 |
罹災法は、関東大震災後に成立した旧借地借家臨時処理法の精神を基に、戦時下の戦時罹災土地物件令を廃して戦後に制定され、その後戦争による罹災対策だけでなく天災による罹災対策として建物の滅失等に対応するために制定されました。戦後、政令の指定(同法25条の2の定めにより、政令による同法の適用範囲の決定が認められています)により、風水害や大規模火災に30件以上適用されてきましたが、大都市罹災としては阪神淡路大震災の適用が最初でした。近時では、新潟中越震災等大規模震災が発生した際に同法が適用されています。しかし、東日本大震災については、平成23年9月30日、同法を適用しないことが決まりました。
政令により罹災法が適用されることになった場合、滅失した建物の借家人は次のような強い権利を取得することになります(以下本章において、「政令」という場合は、特に断りがない限り、ある地域におけるある災害に対して、罹災法25条の2に従い同法を適用する旨の政令をいいます)。
(1) 優先借地権
滅失した建物の借家人は、土地の所有者に対して、当該政令施行の日から2年以内に申し出ることによって、相当な条件で借地権を優先的に取得することができます(罹災法2条1項)。この場合、土地の所有者は、3週間以内に拒絶しないと承諾したものとされてしまいます(同条2項)。そして土地の所有者は、自らその土地を使用する必要性があるなどの正当事由がない限り、拒絶できないこととなっています(同条3項)。
借地の保証金、地代について当事者間に協議が整わないときには、裁判所が鑑定委員会の意見を聞いたうえでこれらを定めてくれます(罹災法15条)。
マンションのように借家人が多数いて、数人が借地の申出をして、その土地の割当てについて当事者間に協議が整わないときには、判断が困難ではありますが、裁判所が割当てをしてくれます(罹災法16条)。
(2) 優先借家権
滅失した建物の借家人は、その建物が建っていた土地に新たに築造された建物について、借家の申出をすることによって相当な借家条件でその建物を優先的に賃借することができます(罹災法14条)。
借家条件についての協議が整わないとき、借家の申出が多数あり全員が割当てを受けられないときの問題は、上記(1)で述べたとおりです。
(3) 借地権優先譲受権
滅失した建物の借家人は、その建物が建っていた土地が借地である場合には、当該政令施行の日から2年以内にその借地人に申し出ることによって、その借地権の条件にて優先的に譲り受けることができます(罹災法3条)。
この借地権の譲渡については、土地所有者は自動的に承諾したものとみなされてしまいます(罹災法4条)。
この借地権譲渡の対価について協議が整わないとき、または複数の者がこの借地権の譲受けを申し出て、当事者間で調整がつかないときの問題については、上記(1)で述べたとおりです。
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Q3 | 震災において建物が滅失した場合と滅失していない場合で、家主と借家人の関係はどうなるのでしょうか。また、実際に建物の滅失とはどのような状態を意味しますか。 |
建物が滅失したかどうかは重要な問題です。
建物が滅失した場合には、借家契約は終了しますが、罹災法を適用する政令が発令された場合には、借家人はその法律に基づく強い権利を有することになります。ただし、本章Q2のとおり、東日本大震災では罹災法の適用はありません。
建物が滅失していない場合には、借家契約が存続するため、建物の使用収益に支障が出ている場合には、原則として賃借人に対し修繕義務を負うことになります。
建物の滅失とは、建物が物理的に倒壊した場合のみならず、建物が物理的には倒壊せずにいても、社会経済的にみてもはや建物としての利用価値(効用)を有しない場合も含みます。罹災証明書の発行の際には、全壊、半壊、一部壊という用語が使用される場合がありますが、全壊は滅失にあたり、一部壊は滅失にあたらないと一般的にはいえるものの、半壊は微妙です。
建物が建っていたとしても、当該建物が危険建物に指定され、取壊しを予定されている場合、建物を修復しようとすれば修復できないこともないが、その費用が過大にかかってしまう場合などはむしろ、全壊とも評価でき滅失にあたりうるでしょう。逆に合理的な修繕費を投下することによって修復可能であれば滅失とはいえません。
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Q4 | 建物が滅失せず借家契約が継続する場合でも、建物の修繕に多額の費用を要することが借家契約の解約を申し入れる正当事由となることがありますか。 |
借家契約が終了せず継続している場合、借家人は借地借家法により保護されているので、仮に賃貸借期間が満了しても家主に正当事由がない限り、家主は借家人に明渡しを強制することはできません(借地借家法28条)。建物が滅失していなくても使用に支障が出ているならば、家主は修繕しなければなりません(民法606条)。
地震で建物の修繕に多額の費用を要するということが、借地借家法28条での正当事由にあたるかどうかは、一概に断定できない微妙な問題ですが、「そこまでの修繕費用を家主に負担させることが酷かどうか」の裁判所の判断により、大規模な修繕をしなければ倒壊の危険が認められるようなケースでは正当事由となり、解約が認められることがあり得ます。
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Q5 | 地震で貸家Aが壊れ、別の場所で生活を余儀なくされた借家人から家賃の免除の要求がありました。また、貸家Bは一部損壊し借家人が不自由な生活を余儀なくされていることから家賃の減額請求がありました。家主としてはどう対処するのがよいでしょうか。 |
家主は、建物が滅失していない限り、借家人に借家を使用収益させる義務を負っています(民法606条)。この義務は、地震というどちら側の責めにも帰すことのできない不可抗力によって家が壊れても、建物が滅失しておらず修繕が可能であれば、家主は免れることはできません(修繕が客観的に不可能であれば、建物が滅失しているといえるので、修繕義務や使用収益させる義務はなくなります。あとは罹災法の問題です。ただし、本章Q2のとおり、東日本大震災では罹災法の適用はありません)。
貸家Aのように、借家が壊れ、滅失はしていないものの住める状態でないため別の場所での生活を余儀なくされている場合には、家主は住めるように修繕しなければならず、それがなされていない間は家主が借家人に使用収益をさせていない状態ということになります。
したがって、その修繕が完了し住めるようになるまでの期間中の家賃の支払義務は発生しないことになります。これは、借家人から家賃免除の要求がなくともいえることです(裁判例は公平の見地から、民法536条1項を類推適用して、使用収益できなくなった時から賃料の支払義務がないとしたものがあります)。
貸家Bのように、もしも借家人が不自由ながらもその家で生活しているのであれば、家賃の支払義務はありますが、この場合には、借家人は、壊れた割合に応じて家賃の減額を請求することができますし(民法611条)、借地借家法に従い、家賃の減額請求権を行使することもできます(借地借家法32条)。ただ、減額請求をしたからといって、家主と協議することなく、借家人が相当額を一方的に控除して支払った場合には、契約解除の紛争が生じうる場合があるので、注意が必要です。
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Q6 | 借家には損傷はありませんでしたが、付近一帯の電気、ガスが止まっている場合で、借家人から家賃の免除の要求がありました。家主は応じなくてはならないのでしょうか。 |
家賃の支払義務はあります。法律の考え方は、家主は借家に電気またはガスを引き込んで利用できる設備をつくっておけば、家主としての義務は全うされたと考えます。そして後は電気事業法、ガス事業法により供給義務を課せられた電力会社、ガス会社の供給義務の問題としています。
したがって、この場合には家主が借家人に使用収益させる義務は全うされているわけですから、借家人は家賃を支払わねばなりません。
なお、周辺の家々には電気やガスが供給されているのに、当該借家だけ供給されていない、というのは、家主に責任がある場合があるので、調査が必要です。
ただし、阪神淡路大震災によりライフラインがストップしたマンションの賃料につき、神戸地判平成10・9・24判例集未登載は、「本件各物件は、本件地震後も建物の効用を維持してはいるものの、平成7年1月17日以降同年3月11日までの間、上下水道及びガスが使用不能であり、同月12日以降同月31日までの間ガスが使用不能で、食事・入浴・用便・就寝といった日常生活を正常に行うことが困難となり、本件各賃貸借契約が目的とした本件各物件の使用収益が大幅に制限される状態になったものと認められる」「賃貸借契約は、賃料の支払と賃借物件の使用収益とを対価関係とするものであり、賃借物件が滅失に至らなくても、客観的にみてその使用収益が一部ないし全部できなくなったときには、公平の原則により� ��務契約上の危険負担に関する一般原則である民法536条1項を類推適用して、当該使用不能状態が発生したときから賃料の支払義務を免れると解するのが相当である」と判示して賃料減額を認めているので、注意してください。
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Q7 | 建物は滅失しませんでしたが、借家人から建物の修繕の請求がありました。家主はどの程度応じなくてはならないのでしょうか。また、修繕のためには、借家人に一時的に建物を出てもらう必要があるのですが、借家人に建物を出るよう求めることはできるのでしょうか。 |
まず、原則的な回答ですと、家主には借家人がその建物を使用するのに必要な修繕義務があります(民法606条1項)。
もし、家主が義務ある修繕を拒絶したときには、借家人が自ら修繕したうえでこれを家主に請求することができます。法律はこれを必要費として直ちに償還請求をすることができると定めています(民法608条1項)。
そして、もし家主がその償還に応じないときには、賃借人は毎月支払う家賃と相殺できることになります。
次に、借家の契約書に修繕は借家人がすることになっている場合があります。しかしこの場合でも、「このような特約は当事者の予測しうる程度の破壊に関するものであり、何人も予想しなかった地震による損壊による大修繕まで含む趣旨ではない」とした判例が出ているので、この場合もその修繕の程度が軽い場合を除き、家主に修繕義務があるといえます。また、小修繕は賃借人負担であるものの、構造躯体にかかわる大規模修繕は家主の負担となっている特約例も多いでしょう。この場合も家主に修繕義務があります。
修繕のため、借家人に一時的に建物を出てもらう必要があるときは、借家人に建物を出るよう求めることができます(民法606条2項)。その場合、借家人が建物を出ている間の家賃をもらうことはできませんが、借家人が建物を出ることに伴う費用(仮住まいの家賃、引越費用等)を負担する必要はありません。
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Q8 | 建物は全部滅失しませんでしたが、借家人から震災による建物の損傷を理由に家賃の減額請求がありました。家主はどの程度応じなければならないでしょうか。 |
その損傷が、建物の一部の滅失といえるほど大きなものであれば、減額請求が認められます。その割合は滅失した部分の割合に応じて減額するということになります(民法611条1項)。借地借家法に基づく減額請求権も行使できるでしょう。
借家人のほうも、減額請求をしたからといって、家主と協議することなく、相当額を控除して支払った場合には、契約解除の紛争が生じうる場合があるので、注意が必要です。
空想は寝室で行う↑このページのトップへもどる
Q9 | 借家が損壊したのをきっかけに借家人から退去のため立退料の要求がありました。家主は明渡しを求めるつもりはないのですが、どうしたらよいでしょうか。 |
世上、借家人には立退料を要求する権利があるようにいわれていますが、家主が立退きを要求してもいないのに立退料を求める権利はありません。
もう少し正確にいうならば、立退料といわれるものは家主の明渡しの要求が強い場合、借地借家法で保護された借家人に明渡しを動機づけ、これを決断させるために家主から借家人に提供される金銭のことです。または、その明渡しに絡む紛争が裁判になっている場合に、裁判所が明渡しを認めるには家主側の正当事由が不足しているというケースにおいて、正当事由を補完するために提供される金銭が立退料といわれるものです。
したがって、家主が特に明渡しを要求しておらず、借家人のほうが退去を考えているケースにおいては、法律的には立退料を支払う義務はありません。借家人にとっては話合いによる解決を図るほかありません。ただ家主としても、話合いに応じるほうが金額次第で早期の解決となりうるでしょう。
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Q10 | 損壊した建物を取り壊そうとしているのですが、借家人が残していった家財道具はどうすればよいですか。傷んではいるものの廃棄しづらい状況です。 |
まず、建物が損壊したからといって、滅失していない限り、当然に賃貸借契約が終了するわけではなく、当該建物について使用収益できる賃借人の賃借権が残っています。
また、建物が滅失して賃貸借契約が終了したとしても、また、賃借人が建物の取壊しに同意したとしても、当該建物の内部に存在する賃借人の家財道具の処分方法については別途対応する必要があります。
(1) 通常の場合
賃借人が当該家財道具の所有権を放棄したことが明確でない限り、これを勝手に処分すると、後に賃借人から損害賠償請求を受ける場合があるので、賃借人に所有権を放棄するかどうかの意思確認(可能であれば書面により同意を得ておくべきです)をしたうえで処分すべきです。
もし、賃借人に連絡がとれない場合には、家財道具の状況を写真でくまなく撮影したうえで、保管場所を確保して保管しておくという手立ても考えられます。建物の倒壊で家財道具自体が壊れてしまうなど緊急を要する場合には、やむを得ないことと考えられますが、その緊急性をみてもらうために警察官等の第三者の立会いを求めたほうがよいでしょう。
ただ、建物が滅失したのに、賃借人が行方不明になっており、動産の処分についての同意がもらえない場合は、当該賃借人に対して、当該土地についての明渡請求訴訟を提起し(十分な調査を行ったのにもかかわらず相手方の住所が不明の場合は、その事情を裁判所に対して資料とともに説明をすることで「公示送達」という手続をとってもらって訴訟を提起・遂行することができます)、明渡しを認める判決をもらったうえで、強制執行として当該動産を撤去するのが、迂遠ではありますが、法的に最も安全な処理方法となります。
(2) 東日本大震災において、人の捜索・救出、遺体の捜索・搬出その他防疫・防火対策の必要性、社会生活の回復等のため、緊急に対処する必要性がある場合
平成23年3月16日付けの環境省の基本的対応方針に基づき、「東北地方太平洋沖地震における損壊家屋等の撤去等に関する指針」(平成23年3月)が公表されています(第5章Q6を参照してください)。
上記指針では、おおむね以下のように定めています。
- ① 作業を行うための私有地への一時的な立入りについては、その所有者等に連絡し、またはその承諾を得なくても差し支えない。ただし、可能な限り所有者等の承諾を得、あるいは作業に立ち会っていただくことが望ましいことから、作業の対象地域・日程等の計画を事前に周知することが望ましい。
- ② 損壊家屋等の撤去については、建物が倒壊してがれき状態になっているものについては、所有者等に連絡し、またはその承諾を得ることなく撤去して差し支えない。本来の敷地から流出した建物についても、同様とする。
- ③ 敷地内にある建物については、一定の原形をとどめている場合には、所有者等の意向を確認するのが基本であるが、所有者等に連絡がとれない場合や、倒壊等の危険がある場合には、土地家屋調査士等の専門家に判断を求め、建物の価値がないと認められたものについては、解体・撤去して差し支えない。その場合には、現状を写真等で記録しておくことが望ましい。
- ④ 建物内の動産(自動車および船舶を除く)の扱いについては、貴金属その他の有価物および金庫等については、一時保管し、所有者等が判明する場合には所有者等に連絡するよう努め、所有者等が引渡しを求める場合は、引き渡す。引き渡すべき所有者等が明らかでない場合には、遺失物法により処理する。
- ⑤ 位牌、アルバム等、所有者等の個人にとって価値があると認められるものについては、作業の過程において発見され、容易に回収することができる場合は、一律に廃棄せず、別途保管し、所有者等に引き渡す機会を設けることが望ましい。
- ⑥ 上記以外の物については、撤去し、廃棄して差し支えない。
これらは、政府の示した暫定的な運用のガイドラインですが、疑義がある場合には上記(1)で示した対応をするのが安全と考えています。
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Q11 | 避難勧告が出たため、今まで住んでいた借家を離れて別のところで生活していますが、借家の家賃を払わなければならないのでしょうか。自主避難の場合はどうでしょうか。 |
避難勧告が出た場合には、借家の使用が客観的に不可能ですので、借家の家賃を支払う必要はありません。
自主避難の場合は、借家の使用が客観的に不可能とまではいえませんので、借家の家賃を支払う必要があると考えられますが、家主に自主避難が必要であった事情を説明して、家賃を減免してくれるよう相談してみてはどうでしょうか。
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Q12 | 借家が滅失したのですが、敷金は返してもらえるのでしょうか。災害等で借家が滅失したときには敷金を返還しない特約が付されていた場合はどうでしょうか。また、借家人が家主に差し入れていたのが敷金ではなく建設協力金であった場合はどうでしょうか。 |
借家が滅失して借家契約が終了した場合には、家主に敷金の返還を求めることができます。家主が死亡していれば、家主の相続人に敷金の返還を請求することができます。ただし、家主も震災の被害を受けている場合には、家主に支払能力がなく、実際には敷金の返還を受けるのが困難かもしれません。
また、災害等で借家が滅失したことによって借家契約が終了したときには敷金を返還しない特約(敷金不返還特約)が付されていることがありますが、このような敷金不返還特約は無効と考えられるため、敷金不返還特約があっても、敷金の返還を請求することができます。
建設協力金とは、ビル等の借家契約の締結に際し、家主が借家人から建物の建設資金として金銭を受領するもので、その多くは、一定期間据置後に、家主から借家人に長期分割で返還されます。建設協力金は、金銭消費貸借契約(貸金)に基づくものと考えられ、敷金とは性質が異なるため、借家契約が終了した場合であっても、必ずしも建設協力金が返還されるとは限りません。借家契約が契約期間の途中で終了した場合に、建設協力金をどのように返還するかは契約内容等によります。
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Q13 | 借家に住んでいますが、家主の自宅が震災で滅失したため、家主から、自分が住みたいので退去してくれといわれています。どうしたらよいのでしょうか。 |
家主からの解約に正当事由があるかどうかが問題となります。正当事由があるかどうかは、建物の賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、立退料の支払いの有無や金額等を考慮して、総合的に判断されます。自分が住みたいというだけでは正当事由があるとはいいがたいように思われますので、家主からの解約はできず、退去する必要はありません。
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Q14 | 借家が被災しましたが、がれき状態になったわけでもないのに、家主が勝手に私の所持品を撤去してしまいました。家主に対してどのような請求ができるでしょうか。 |
家主に対して損害賠償を請求することが考えられます。ただし、実際には、損害に関する立証等が難しいかもしれません。
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Q15 | 家主から借家の修繕費用の負担を求められましたが、修繕費用を支払わなければならないのでしょうか。借家契約で修繕は借家人の負担とされている場合はどうでしょうか。 |
借家の修繕義務を負うのは家主であるため(民法606条1項)、借家人は修繕費用を支払う必要はありません。借家契約で修繕は借家人の負担とされている場合であっても、借家人が負担する修繕は、通常生ずることが想定される小修繕であって、大規模修繕や天災等による甚大な被害に対する修繕については、家主に修繕義務があると考えられます。
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Q16 | 家主から借家の立退きを求められましたが、出ていかなければならないのでしょうか。また、借家から退去する場合、家主に立退料を請求することはできるのでしょうか。 |
借家が滅失している場合には、借家契約が終了しているので、借家から退去する必要があり、立退料を請求することはできません。
借家が損壊したものの滅失しておらず、修繕すれば居住可能であるにもかかわらず、家主が借家からの立退きを求めている場合には、家主からの解約申入れに正当事由があるかどうかが問題となり、家主からの解約申入れに正当事由がない限り、原則として退去する必要はありません。正当事由があるかどうかは、建物の損壊の内容や程度、修繕に要する費用、立退料の支払いの有無や金額等、諸般の事情を総合的に考慮して判断されます。修繕が容易であるのに、家主が借家を取り壊そうとして立退きを求めている場合等であれば、家主に立退料を請求することができる場合もあります。
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Ⅱ 借 地
Q17 | 震災により借地上の建物が全壊しましたが、借地権は消滅しますか。 |
建物が滅失しても、それだけでは借地権は消滅しません。これは、平成4年8月1日から施行された借地借家法でも、それ以前の借地法(以下、「旧借地法」といいます)でも同じです。
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Q18 | 震災により借地上の建物が全壊したので、借地人が再築したいといってきました。地主は承諾する必要がありますか。 |
地主は承諾する必要はありませんが、本章Q17のとおり借地権は消滅しないので、再築禁止特約がない限り、地主の承諾がなくても、借地人は再築することができます。
ただし、再築禁止特約がなくとも、建物の種類・構造等を制限する特約が付いている場合もあるので、従前の建物とは異なる建物を建てるような場合には注意が必要です(本章Q24、Q25、Q26参照)。
他方、地主の側は、再築に対して異議は主張しておくべきでしょう。
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Q19 | 平成4年8月1日より以前から借地人が建てていた建物が震災により全壊したのですが、借地人が再築した場合には借地借家法に基づく借地権に変わるのですか。 |
本章Q17のとおり借地権は消滅しないので、旧借地法に基づく借地権のままです。
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Q20 | 震災により借地上の建物が全壊しましたが、万一、再築する前に土地所有者がその土地を第三者に売った場合には、借地権をその新しい土地所有者に主張できますか。 |
建物所有を目的とする借地権は、借地権の登記または借地上の建物の登記を備えていれば、第三者に対しても主張することができます。
したがって、借地上の建物が全壊した場合、借地上の建物の登記は失効するため、原則として、借地権の登記がない限り、新しい土地所有者に対して借地権を主張することはできなくなります。
なぜ黒人の日付他の女性ただし、借地人は、借地権の登記がなくても、全壊した建物に関する所在、家屋番号、種類、構造などの登記事項、全壊した日時、新しい建物を建てる旨、および自分の住所氏名を記載した立看板を立てたうえで、滅失の日から2年以内に新しい建物を建築し、かつ、当該建物の登記をすることで、新しい土地所有者に対しても借地権を主張することができます(借地借家法10条2項)。
また、震災等の災害時には、政令によって罹災法が適用される場合があります。ただし、平成23年9月30日、法務省は東日本大震災については罹災法を適用しないこととしました。
この政令が施行された場合は、建物が滅失した借地人は、借地権の登記がなかったり、立看板を立てなくとも、政令が施行された日から5年間は、新しい土地所有者に対して借地権を主張することができます(罹災法10条、25条の2)。
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Q21 | 罹災都市借地借家臨時処理法10条、25条の2により借地権を行使されうる場合には、土地所有者は、指定地域の土地を売りたくても、借地権が付いたまま売ることになるのでしょうか、それとも借地権が付かない土地として売ることができるのかが決定するのに、5年間も待ち続けなくてはならないのでしょうか。 |
設問のような事態を避けるため、土地所有者は、政令施行日から2年以内に、1カ月以上の期間を定めて、建物を建てる意思があるかないかをその期間内に回答するように借地人に催告することができます(罹災法12条、25条の2)。
もしそのような催告をしたのにもかかわらず、回答期間内に借地人から借地権を存続させる意思があるとの回答がない場合には、借地権は消滅します。
ただし、通常は、借地人から借地権を存続させる意思があるとの回答が返ってくると思われます。その場合には、借地権は存続するので、借地権が付いた土地として売却することになります。
なお、東日本大震災については、罹災法の適用はありません。
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Q22 | 借地人の借地期間があと半年の建物が震災により全壊してしまいました。借地人より半年以内に建物を建てるのは無理とのことから、借地契約は更新しないことができるでしょうか。 |
通常の場合には、借地期間が満了する時点で建物がなければ借地契約は法定更新されず、賃貸人との間で新しい契約を締結しない限り、借地人は土地を明け渡さねばなりません。
しかし、政令により罹災法が適用される場合、震災等により滅失した建物の敷地に関する限り、残存期間が10年未満の借地権は、自動的に当該政令施行時より10年まで延長されることになっています(罹災法11条、25条の2)。
その後は、もともとの借地権に適用されていた旧借地法または借地借家法に基づいて契約の更新があり得ます。
もちろん、もともと借地権の期間が当該政令施行後10年経過以降に満了するものは、その期間まで借地権は存続し、期間が短くなることはありません。
なお、東日本大震災については、罹災法の適用はありません。
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Q23 | 借地人の建物はもともと老朽化していたのですが、震災で全壊しました。この場合、借地権はどうなるのでしょうか。 |
(1) 旧借地法が適用される場合
旧借地法が適用される借地権(平成4年7月31日までに契約が締結されていた借地権)については、次のとおりとなります。
- ① もともと合意により借地期間が定まっていた場合には、建物が老朽化していたとしても、再築自体はできます。ただし、その後の期間に注意してください(本章Q27、Q28参照)。
- ② 契約で借地期間が定められていなかった場合には、その期間は60年(堅固建物の場合)または30年(非堅固建物の場合)とされますが、建物が老朽化して使用に耐えないような状態(朽廃といいます)になった場合は、その時点で借地権は消滅するとされています(旧借地法2条但書)。
ただ、大震災により全壊したような場合には、朽廃していたから全壊したのか、まだ朽廃していなかったけれども震災が大きかったので全壊したのかが不明です。
賃貸人としては、前者だから借地権は消滅したと主張することになりますし、借地人としては、後者だからまだ借地権は消滅していないと主張することになります。詳細は弁護士に相談してください。
(2) 借地借家法が適用される場合
借地借家法が適用される借地権(平成4年8月1日以後に契約が締結された借地権)については、次のとおりとなります。
- ① もともと合意により借地期間が定まっていた場合の扱いは、上記旧借地法の場合と同じで、再築自体は可能です。その後の存続期間については本章Q21、Q22を参照してください。
- ② 契約で借地期間が定められていなかった場合には、借地権の存続期間は30年とされ、旧借地法2条但書のような朽廃した場合の特則はないので、結局、①同様、再築自体は可能ということになります。その後の存続期間については本章Q27、Q28を参照してください。
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Q24 | 震災によって建物が全壊した場合、増改築禁止特約や再築禁止特約がある借地契約の場合でも、再築は可能ですか。 |
増改築禁止特約や再築禁止特約があっても、震災による全壊のような場合には、その特約が想定していた局面と異なると考えられます。したがって、もし、再築について地主の承諾が得られない場合には、裁判所に対し、地主の承諾に代わる許可を与えるように申し立てることができます(借地借家法17条2項、18条)。
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Q25 | 本章Q24に関係して、賃貸人の立場からは、いかなる特約があっても震災の場合には無意味なのですか。 |
本章Q24のとおり、震災による倒壊の場合、再築自体を禁止することはできませんが、契約で建物の規模、用途などを制限している場合には、その特約は有効です。
したがって、その特約に違反する建物の建築をやめさせることができ、また場合によっては特約違反により契約を解除できます。
ただし、建物の規模、用途などの制限の特約についても、変更することが相当と認められる場合には、申立てにより裁判所が借地条件を変更することができる場合があります(借地借家法17条1項)。
微妙なケースが多いので、詳細は弁護士等の専門家に相談してください。
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Q26 | 本章Q25に関係して、借地人から、特約で木造建築しか建てられないことになっているけれども、この際、震災でも倒れない堅固な建物を建てたいといわれた場合には、土地所有者はどうすればよいのですか。 |
義務的にこれに応じなければならないということはありませんが、これを拒んだ場合、借地人から借地条件変更の裁判(借地借家法17条1項)を提起されることがあります。そして、その場合、通常は、裁判所は、建替承諾料の支払いや地代の増額と引換えに、堅固な建物に建て替えることを認める決定を出すことが多いといえます。
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Q27 | 震災で建物が全壊した場合、再築は可能としても、借地期間はどうなるのですか。 |
(1) 旧借地法が適用される場合
旧借地法が適用される借地権(平成4年7月31日までに契約が締結されていた借地権)については、次のとおりです。
- ① 再築した建物は、多くの場合には、残る借地期間を超えて存続しうると思われます。そのような場合に、賃貸人が、速やかに異議を述べないときには、借地期間が従前の建物が全壊した日から30年(鉄骨造などの堅固な建物を建てた場合)または20年(木造などの非堅固な建物を建てた場合)に延長されます(旧借地法7条)。もちろん、もともとの借地期間がそれより長い場合には元のままで、期間が短縮されるわけではありません。
- ② 賃貸人が速やかに異議を述べた場合には、借地期間は延長されず、元の期間のままです。
(2) 借地借家法が適用される場合
借地借家法が適用される借地権(平成4年8月1日以降に契約が締結された借地権)については、次のとおりです。
- ① 定期借地権の場合には、期間に影響はありません。
- ② 普通借地権の場合には、若干手続が変わります。
まず、賃貸人が新築を承諾した場合には、借地期間は承諾後20年間存続します(借地借家法7条1項)。もちろん、残存期間のほうが長かったり、あるいは20年間よりも長い存続期間を合意した場合には、その期間存続することになります。
また、借地人が賃貸人に対し、事前に賃貸人に残存期間を超えて存続すべき建物を新築する旨の通知をし、賃貸人から2カ月以内に異議が述べられなかった場合には、20年間、借地期間が延長されます(借地借家法7条2項)。異議が述べられた場合には、残存期間は元のままです。
(3) 罹災法が適用される場合
政令により罹災法が適用される場合には、残存期間が10年間に満たない場合、10年間の期間の延長があり得ますので、注意してください(本章Q22参照)。
なお、東日本大震災については、罹災法の適用はありません。
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Q28 | 本章Q27に関係して、震災により建物が全壊した場合、賃貸人からすれば、再築に異議を述べても期間が元のままになるだけですので、あまり効果はないのでしょうか。 |
確かに、期間が延長されないというだけ(ただし、これだけでも大きな効果であると考えられます)のようにも思えますが、異議を述べれば、それが期間の満了時の法定更新の有無を判断する際に考慮されることとなっているので、異議を述べることには意味があります。特に従前の建物が老朽化していたような場合には効果が大きくなります。詳細は弁護士等の専門家に相談してください。
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Q29 | 震災により建物が全壊したのですが、資力の関係で、借地人が自力で建物を再築することを断念しました。そのような場合、借地人が他に借地権を譲渡してお金に変えることなどができるのでしょうか。 |
建物が建っている場合には、賃借権の譲渡の許可の裁判を利用することになりますが、建物が全壊した場合は建物自体がないので、これを利用することはできません。したがって、賃貸人の了解を得ない限り、他に借地権を譲渡することはできません。
借地人としては、建物が全壊していないと主張したり、簡易な建物を建てるなどの手段をとることが考えられます。それに対し、賃貸人からは、建物は全壊しているし、簡易な建物を建てて譲渡することはできないと主張することになります。
詳細は弁護士等の専門家に相談してください。
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Q30 | 地主から土地を借りて、その借地上の建物を第三者に貸していましたが、震災により全壊しました。羅災都市借地借家臨時処理法により、借家人が敷地の借地権を譲渡せよと求めてくることを防ぐにはどうすればよいのですか。 |
羅災法により、指定地域内では、全壊した建物の借家人は、借地人に対し、その借地権を譲渡するように申し出ることができます(同法3条)。借地人がこの申出をできる期間は、指定地域に指定された日から2年です(同条、2条1項)。
これに対し、借地人は、借家人の申出から3週間以内に、拒絶の意思を伝えない限り、自動的に借地権が借家人に譲渡されたことになるので、注意が必要です(羅災法3条、2条2項)。特に、借家人が口頭で申出をしていたと主張して紛争となることもあるので、借家人から、借地権譲渡の申出を思わせるような言動があった場合には、書面によるなど明示の拒絶の意思を伝えておくべきでしょう。
もっとも、借家人から申出が届く前に、敷地を建物所有の目的で使用し始めていれば、借家人の借地権譲受けの申出に対抗することができます。少なくとも、建物再築のために建築工事に着工すれば、敷地を建物所有の目的で使用し始めたといえますが、その判断には微妙なケースがあるので、詳細は弁護士等の専門家に相談してください。
なお、建物を再築する場合、再築した建物に借家人が借家権を主張する場合もありますが、これについては、本章Q31を参照してください。
男性は女性を安心させる方法敷地を建物所有の目的で使用し始める前に、借家人から申出があった場合には、これを拒絶する正当な理由が必要です(羅災法3条、2条3項)。他に住むところがないなど、どのような理由があれば拒絶の正当な理由になるかは極めて微妙な問題ですので、弁護士等に相談してください。また、回答期間が申出から3週間しかないこと、しかも回答は、3週間以内に借家人に届くことが必要なことに注意してください。
借地権の譲渡を承諾する場合に、その対価について合意する必要がありますが、この合意ができない場合には、裁判所に決定してもらうことになります(羅災法15条)。
借地権の譲渡を承諾した場合でも、承諾後1年以内に元借家人が建物を建築しない場合には、借地権の譲渡を解除することができる場合もあるので(羅災法7条1項)、注意してください。
なお、東日本大震災については、羅災法の適用はありません。
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Q31 | 地主から土地を借りて、その借地上の建物を第三者に貸していましたが、震災により全壊してしまいました。建物を再築しようと思うのですが、従前の借家人に貸さなくてはなりませんか。 |
罹災法により、指定地域内において、従前の貸借人は、貸借していた建物の敷地(その換地も含みます)上に新しく建てられた建物について、優先的な借家権を有しています(羅災法14条1項)。すなわち、借家人は、建物を貸借したいと申し出れば、新しい建物についても優先的に貸借することができるのです。ただし、借家人がこの申出をできるのは、建物が完成するまでの間です。
本章Q30は、借家人が自分で建物を建てることを前提にしていますが、本問では、借家人が、自分以外の人が建てた建物についての借家権を主張する点に違いがあります。
借地人が建物を再築する場合に、借家人のこの申出を拒絶するためには、借家人の申出から3週間以内にこれを拒絶する必要があり、さらにその拒絶には正当な理由が必要です(羅災法14条2項、2条2項・3項)。
どのような理由があれば拒絶の正当な理由になるかは、微妙なケースが多いので、詳細は弁護士等の専門家に相談してください。
なお、東日本大震災については、羅災法の適用はありません。
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Q32 | 羅災都市借地借家臨時処理法の適用については、建物が全壊したのか、していないのかにより、相当有利不利が異なるようですが、全壊したかどうかの判定はどうすればよいのですか。 |
地方自治体の発行する罷災証明、建築士、損害保険会社などの判定も参考になります。
ただ、修繕が合理的範囲内で可能かどうかという視点も入るので、最終的には法律判断になります。まずは写真などの証拠を残したうえ、詳細は弁護士等の専門家に相談してください。
なお、東日本大震災については、羅災法の適用はありません。
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Q33 | 賃貸駐車場として利用していた土地が地震により崩壊してしまいました。駐車場の賃貸借契約はどうなりますか。また、津波によって使用に耐えなくなった場合は、どうでしょうか。 |
駐車場用地の崩壊が著しく復旧に過大な費用を要するときは、賃貸借契約の目的物の滅失のため、契約が終了することになると考えられます。
崩壊の程度がある程度軽微にとどまる場合には復旧するか、通常、契約には一定の予告期間を設けた予告により解約できる旨の条項がおかれていることから、この解約権を行使することになります。なお、駐車場賃貸借契約には借地借家法は適用されません。
ところで、駐車場として利用できない原因が地震や津波である以上、通常、貸主に利用できない間の利用者の損害を賠償する責任はありません。ただし、この期間の駐車料金を徴求することはできません。
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Ⅲ マンション
Q34 | マンションの共用部分が震災で一部損壊しました。修繕するためには、どのような手続をとればよいのでしょうか。 |
マンションの共用部分の修繕は、マンションの共用部分の管理に関する問題となります。マンションの共用部分の管理に関する事項は、総会の決議で決められ(区分所有法18条1項)、区分所有者および議決権の各過半数で決せられます(同法39条1項)。修繕費用は、原則として、共用部分の持分に応じて負担することになります(同法19条)。
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Q35 | マンションの一部が震災で滅失してしまいました。修繕するためには、どのような手続をとればよいのでしょうか。 |
建物の価格の2分の1以下に相当する部分の滅失であれば、総会で区分所有者および議決権の各過半数で復旧する旨の決議をすることができます(区分所有法61条1項・3項)。
建物の価格の2分の1を超える部分の滅失の場合には、総会で区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数で復旧する旨の決議をすることができます(区分所有法61条1項・5項)。決議に賛成しなかった区分所有者は、決議に賛成した区分所有者に対し、建物およびその敷地に関する権利を時価で買い取るよう請求することができます(同条7項)。
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Q36 | マンションが震災で大きな被害を受けたので、この機会に建て替えたいと思います。どのような手続をとればよいのでしょうか。 |
総会で区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数で建替え決議をすることができます(区分所有法62条)。再建建物の設計の概要、建物の取壊しおよび再建建物の建設に要する費用の概算額、費用の分担に関する事項、再建建物の区分所有権の帰属に関する事項は、建替え決議で定めなければなりません(同条2項)。建替え決議に賛成した区分所有者等は、建替えに参加しない区分所有者に対して、区分所有権および敷地利用権を時価で売り渡すよう請求することができます(同法63条4項)。
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Q37 | マンションが震災で全壊してしまいました。再びマンションを建てるためには、どのような手続をとればよいのでしょうか。 |
マンションが全壊してしまった場合には、建物についての権利関係はなくなり、敷地についての共有関係だけが残ると考えられます。そのため、敷地に再びマンションを建てるには、敷地共有者全員の同意が必要と考えられます(民法251条)。
しかし、政令によって「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」(以下、「被災マンション法」といいます)が適用された場合には、敷地共有者等の議決権の5分の4以上の多数で再建の決議をすることができます(被災マンション法2条、3条)。再建建物の設計の概要、再建建物の建築に要する費用の概算額、費用の分担に関する事項、再建建物の区分所有権の帰属に関する事項は、再建の決議で定めなければなりません(同法3条2項)。再建の決議がなされた場合には、区分所有法に定める建替え決議がなされた場合と同様に、建替えに賛成した敷地共有者等は、建替えに参加しない敷地共有者に対し、敷地共有持分等を時価で売り渡すよう請求することができます(同条6項)。ただし、東日本大震災については、平� ��23年9月30日、被災マンション法を適用しないことが決まりました。
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Q38 | マンションが震災で傾いて危険なので、解体する必要がありますが、どのような手続をとればよいのでしょうか。 |
マンションの解体については、特に規定がないので、原則として、区分所有者全員の同意を得る必要があると考えられます。倒壊家屋等の解体・撤去については、自治体で費用負担して実施することがあるので、自治体に問い合わせてください。
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Ⅳ 土地建物所有権
Q39 | 地震によって、地盤が崩壊し土地や建物が被害にあってしまいました。土地の造成業者や不動産業者に対して、損害賠償請求または瑕疵担保責任の追及はできますか。 |
土地や建物に瑕疵(欠陥)があったのなら、契約上の瑕疵担保責任も不法行為責任も追及できる余地はあります。
ただし、瑕疵担保責任にせよ不法行為責任にせよ、瑕疵が原因で損害が生じたこと(損害との因果関係といいます)が必要になります。耐震対策の予想を超えるような大規模な地震があった場合、瑕疵が原因で損害が生じたことの立証が難しく、業者の責任を追及できない場合が多いと思われます。
ただ、震度が小さかったにもかかわらず被災した場所においては、その地盤、造成の手抜き、盛土の不完全、よう壁の欠陥、行政法規への違反を立証して責任追及をすることは理論的には可能と思われます。
もっとも、いずれの場合においても、一義的に責任追及の可否を決定できるわけではありません。いろいろな要素を総合的に考慮して責任の有無が判断されることになるので、詳しくは弁護士等に相談されるとよいでしょう。
ただ、瑕疵担保責任について請負の場合は請負契約約款との関係上、2年以内に責任追及しなければならないことがほとんどですし、購入した場合にはその欠陥を知ってから1年以内にしなければなりません。その期間を超えている場合には不法行為責任のみを求めることになりますが、さらに立証責任や因果関係の法的な問題も存します。
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Q40 | 地震によって建物が損壊してしまいました。建物を建築した請負業者や不動産会社に損害賠償請求または瑕疵担保責任を追及できるのは、どのような場合ですか。津波によって建物が損壊した場合はどうでしょうか。 |
本章Q39で述べたとおり、耐震対策の予想を超える震度が大きい地震では、請負業者等に対しての責任の追及は困難な場合が多いと思われます。
震度が小さい地域であるにもかかわらず損壊した場合は、契約上の瑕疵担保責任、不法行為責任を追及できる可能性がありますが、震度だけで一義的に決められるわけではない点も本章Q39と同様です。また、津波による被害についても、その損壊が、津波によって生じたものか、それとも瑕疵によって生じたものかによって結論が変わってくることになります。
ただ、瑕疵担保責任を追及できるのは、請負の場合、建築請負契約約款との関係上、1年以内(鉄筋コンクリートなど堅固な建物の場合は2年以内)であることがほとんどですし、購入した場合はその欠陥を知った時から1年以内です。もっとも、損壊した建物を新築で購入していたような場合には、請負にせよ売買にせよ、引渡しの時から10年以内であれば、責任追及できる可能性がありますが(住宅の品質確保の促進等に関する法律)、中古の建物を購入した場合には、1年(鉄筋コンクリートなど堅固な建物の場合は2年)を超えている場合は不法行為責任のみを求めることになります。そのときの法的問題は本章Q39のとおりです。詳しくは、弁護士等の専門家に相談してください。
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Q41 | 隣家の地盤やブロック塀が崩れて、当方の建物が損傷を受けてしまいました。この場合隣家に損害賠償を請求できますか。 |
本章Q46で詳しく扱っていますが、土地工作物責任に基づく損害賠償請求ができる場合があります(民法717条1項)。
参考になる裁判例として、宮城沖地震の仙台地方裁判所の裁判例があります。この裁判例の事案はブロック塀が倒れて第三者を死亡させたものですが、「ブロック塀がその製造された当時通常発生することが予想される地震動に耐え得る安全性を有しているか否かを客観的に判断すべきである」との判断基準を示しました。そうすると、たとえば耐震基準を満たして製造されたものであるか否かは判断にあたっての要素の1つになるでしょう。
したがって、崩れたブロック塀が通常発生することが予想される地震動に耐えることができたかは、責任の存否の判断にあたって検討されるべき要素になりますが、その立証責任は賠償を求める側にあります。予測を超える強度の地震が発生した場合にはその立証が困難になるでしょう。逆に、予想を超えない程度の震度の地域において地震により、近隣のブロック塀が何ら異常がないのにもかかわらず、そのブロック塀だけが倒れて損害を被ったなどという場合には立証がしやすくなる可能性があります。ただし、あくまでも損害賠償責任があるかどうかの判断は、いろいろな要素の総合考慮になりますから、地震の大きさだけで判断するのは危険です。詳しくは弁護士等に相談してください。
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Q42 | 震災により隣家の建物が全壊したまま放置され、当方に崩れかかる危険があります。予防措置を請求することはできますか。 |
当方が所有者のときも賃借人のときも、いずれも崩れかかる危険を予防するため妨害予防の各措置を求める請求権があります。その費用は、協議が必要ですが、原則として隣家の負担となります。
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Q43 | 危険であるとの当方の請求が無視され放置された結果、隣家の廃材が雨水とともに当方の敷地に流入し、損害を被りました。この場合、損害賠償を請求できますか。 |
不法行為に基づく損害賠償請求をできる場合があると思われます。
不法行為責任を追及する場合、相手方の故意または過失があることを立証する必要があるのですが、本章Q42のように客観的に危険な状態にあり、しかも、予防請求をしたのに、相手方が聞き入れなかったために倒壊または廃材などが流れ込むなどしたときは、相手方にそのような行為について過失があったと一応は推測されます。ただ、相手方において、そのような予防措置に対応できるような状況になく、対応が不可能であるという場合には過失が認められないことがあり得ます。
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Q44 | 本章Q42のような場合で、相手方が聞き入れてくれないような場合には、法的手段によらず、侵害行為を除去すること(自力救済)はできますか。できるとすれば、どの程度のことをすることが許されますか。費用はどうなりますか。 |
本章Q42のような場合で相手がいない、または聞き入れてくれないなどの場合、原則的には裁判所に妨害予防の仮処分を求めて、危険の具体的排除措置をとることになります。
ただ、まさに危機が迫っている場合など、種々の理由でそのような時間を費やすことが許されない場合には、自ら他人の建物を一部除去、保全するなどの行為をせざるを得ないことがありうるでしょう。このような行為を自力救済とよびますが、わが国の法制度の下では極めて例外的(正当防衛、緊急避難)にしか認められていません。軽々に判断して実行してしまうと、かえって相手方から財産権を侵害したとして不法行為責任を追及されるおそれが十分にあり得ます。その基準は両当事者の法益の比較になりますから、具体的ケースごとにすべて異なるので注意が必要です。
上記とは異なり、公法上の措置を求めることも考えられます。災害対策基本法において、市町村長は、災害の拡大を防止するために必要な応急措置を講じる義務を負っており(同法62条)、同法64条2項において、市町村長は、「応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、現場の災害を受けた工作物又は物件で当該応急措置の実施の支障となるものの除去その他必要な措置をとることができる」とされているので、危険と考えられる場合には、早急に市町村長に公法上の措置をとるよう申し出ることも1つの方法です。この点に関連して、環境大臣は、関係知事にあてて、平成23年3月25日付けで、「東北地方太平洋沖地震における損壊家屋等の撤去等に関する指針」を通知しました。同指針は、行政庁が、東� ��本大震災で発生した損壊家屋や車両、その他動産等を撤去する際の指針を示したものです。人や遺体の捜索や防疫・防火対策の必要性、社会生活の回復等のために、所有者への連絡や承諾を得ずとも、私有地に立ち入ることは、差し支えないとしています。また、たとえば、倒壊してがれき状態になった建物や本来の敷地から流出した建物についても、所有者への連絡や承諾を得ることなく撤去しても差し支えないとしています。したがって、同指針に基づいて、市町村が公法上の措置をとることが期待されます。
なお、第5章Q5、Q6も参照してください。↑このページのトップへもどる
Q45 | 火災や津波により不明となった隣家との境界の確認にはどのような方法がありますか。地震によって地表が移動した場合はどうなるのですか。 |
隣家との境界(登記簿にいう公法上の番地と番地との境界)は地表などが移動しても、本来の位置からは移動しません。したがってその境界は、地震によって動かなかった固定点よりの測量、分筆図、地積図、境界標などから確認するほかありません。この点に関連して、法務省は、平成23年3月24日付けで、「災害復旧における境界標識の保存について」と題する報道発表を行っています。同発表においては、復旧作業にあたって、コンクリート杭や金属鋲を可能な限り保存するよう要請しています。これらの杭や鋲が境界標である可能性があり、境界標は、たとえ地震によって位置がずれていたとしても、土地の境界を特定するために役立つ物だからです。
以上は、原則論ですが、大規模な地震によって広い範囲の移動が生じた場合には、特別な取扱いがなされます。地震による地殻の変動に伴って広い範囲にわたって地表面が水平移動した場合には、土地の境界も相対的に移動したものとして取り扱われます(平成7年3月29日付け法務省民3第2589号民事局長回答)。ただし、崖崩れのような局地的な地表面の土砂の移動の場合は、これにあたりません。
この回答は、阪神淡路大震災に際して出されたものですが、同震災においては、被災地周辺で1メートル以上のずれが生じました。東日本大震災でも、震源に近い宮城県東部の牡鹿半島では陸地が東側に水平に5.3メートル動く地殻変動が生じており(国土地理院の平成23年3月19日付け報道発表「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に伴う地殻変動について データ回収により、新たに牡鹿半島での変動が明らかに 」)、同じ取扱いがなされるものと考えられます。
たとえば、東日本大震災によって、地域全体が水平移動したような場合には、隣接地とともに敷地の境界も移動したことになるので、現地にある境界標を測量図の境界標とみなすことができ、現に存在する境界標が境界となります。
なお、もし隣家との間で相互の土地所有権の境界に合意できれば、多くの場合それで十分ですし、それが他の者から争われない限り、事実上そこでの取り決めが境界となると考えられます。
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Q46 | 工作物責任について教えてください。 |
土地の工作物につきその設置または保存に欠陥があって他人に損害を与えたときは、その工作物の利用者は賠償義務を負います(民法717条1項)。もし利用者が、十分な注意を払っていたことを証明すれば、その賠償義務は所有者が負わなければなりません。この場合の土地の工作物とは建物、ブロック塀、壁、土地に接着した看板、土地に接着している機械、などがこれにあたります。土地の工作物によって被害を受けたときは、相手方に不法行為の故意、過失があったことを立証する必要はありませんが(無過失責任)、その代わりに工作物の欠陥を立証する必要があるのです。建築基準法に従って建築されたものであれば、一応「設置の瑕疵」はないといえます。ただし、旧耐震基準には適合しているが、新耐震基準には適合� ��ていないという場合には、「保存の瑕疵」があるとして、所有者が責任を問われるおそれがあるので、注意してください。
なお、土地の工作物によって被害を受けた場合であっても、一般の不法行為によって責任を追及する方法を選んでもかまいませんし、両方の理論を併用してもかまいません。
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Q47 | 不動産の登記済権利証書を紛失した場合はどうなりますか。 |
(1) 登記済権利書の紛失の場合
登記済権利証書は大切、重要な書類ですが、紛失してしまったら仕方がありません。再発行、再生はできません。
もっとも、紛失してしまったからといって、その人の不動産に対する所有権等がなくなるわけでもありません。不動産登記簿には、依然としてその人の名義が登記公示されているので、心配はいりません。法務省も、平成23年3月29日付け報道発表「東北地方太平洋沖地震により権利証(登記済証・登記識別情報通知書)を紛失した場合について」において、同様の注意喚起を行っています。
ただ、その不動産を売買したり担保に入れたりする等のように、権利関係の変動を伴う場合には、登記官による「事前通知制度」(個人の場合には、本人限定受取郵便というものが送られてきます)か、司法書士、弁護士、公証人による「本人確認制度」(司法書士等の資格者代理人がパスポート等の書類で本人確認をし、その本人確認情報を法務局に提供するという制度)による手続を用いることになります。詳細は司法書士等に相談してください。
なお、不正な登記を防止する方法として不正登記防止申出制度があります。この制度は、不正な登記がされる差し迫った危険がある場合には、申出から3カ月以内に不正な登記がされることを防止するための制度です。この申出により、申出から3カ月以内に登記申請がなされた場合は、申出をした人に登記申請がなされている旨が通知されるので、身に覚えのない登記がなされることを防ぐことができます。詳しくは、最寄りの登記所に相談されるとよいでしょう。なお、被災地の法務局の連絡先は以下のとおりです。
【被災地の法務局の連絡先】
- ・仙台法務局民事行政部不動産登記部門 022−225−5767
- ・盛岡地方法務局登記部門 019−624−9852
- ・福島地方法務局不動産登記部門 024−534−1111
(2) 登記識別情報(所有権)に係るもの
平成17年3月7日から、登記済証に変わり、登記識別情報が交付されるようになりました。これは、12桁の英数字を組み合わせた符号ですが、これによって本人の確認がされることになります。○○○−○○○−○○○−○○○のように表記されます。
この登記識別情報を紛失してしまった場合ですが、登記識別情報は、登記が完了したときに通知されるものですから、その再通知は認められていません。もっとも、紛失したからといって、その不動産に対する所有権等が失われるわけではないことは上記(1)と同じです。
また、その不動産を売買したり担保に入れたりする等のように権利関係の変動を伴う場合には、上記(1)と同様に、登記官による事前通知制度や司法書士等による本人確認制度による本人確認手続がされた後に、登記の移転等をすることになります。
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Q48 | 震災により、権利証(登記済証)、登記識別情報通知書を紛失しましたが、第三者に悪用されないか心配です。どのような点に注意すればよいでしょうか。 |
震災または津波により、不動産の所有者が権利証(または登記識別情報通知書)を紛失しても、当該不動産の権利を失うものではないことは本章Q47のとおりです。
仮に、紛失した権利証等を拾得等した者が、不正に当該不動産の登記名義を変更したり、担保権の設定登記をしようとしても、権利証等以外に所有者の発行後3カ月以内の印鑑証明書および実印が必要ですので、権利証等のみを紛失した場合、直ちに不正な登記がなされることはありません。
また、実印および印鑑カードもあわせて紛失し、本人が知らないうちに印鑑証明書が発行される等、不正な登記がされる差し迫った危険がある場合は、当該不動産を管轄する法務局に対し「不正登記防止申出」をすることができます。この申出をすることにより、申出から3カ月以内に当該不動産に関する登記が申請された場合、法務局から申出人に対し通知がされ、また、場合によっては登記官が申請人の権限の有無を調査する等、一定の効果が期待できます。
当該不動産について、所有者に対し権利証ではなく、登記識別情報が通知されている場合、不正な利用を防止するために、本人の申出に基づき当該登記識別情報を「失効」させることもできます(ただし、失効の取消し、登記識別情報の再通知を受けることはできませんので、注意してください)。
なお、万一、不正な手続により当該不動産の名義変更登記または担保権設定登記がなされた場合は、最終的に裁判所の判決等により登記名義の回復または担保権の抹消登記手続を行うことになります。
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